日常お宝探検隊

30代独身理系男子が、幸福の最大化を目指して努力するけどそもそも方向性が間違ってるブログ

エジプト-イスラエル旅行記vol.6

嘆きの壁を目指して

少し休んだ後、ホテルに荷物を預け、歩いて旧市街方面に向う事にした。

エルサレム旧市街には、周囲がおよそ1km四方の城壁に囲まれている。

この城壁は、16世紀前半のオスマントルコ帝国全盛時代に建設されたらしい。

城壁には周辺8箇所の門があり、僕は新市街から最もアクセスの良かった「ヤッフォ門」を目指した。

ホテルで調べたある個人ブログの情報によると、このヤッフォ門前でもSIMが買えるらしかった。一抹の期待と不安を胸に、門の前まで到着したものの、SIMカード売り場は存在の鱗片すら見つからない。そもそも、やはりシェバットで閉店している店も多い。

シェバット中のヤッフォ門

やれやれ。

通信環境がなければ、城壁内はただの入り組んだ迷路だ。

幸い、GPSで大まかな位置情報は分かるものの、なんだかかんだ感度も悪く、アテにも出来ない。こういう時は、グズグズ考えていても仕方がない。スマホが無い時代に頭を切替え、とにかく前に進むだけだ。

城壁の中は賑やかだ



歩き始めて周囲を見渡せば、そこかしこに名所を示す看板を見つける事ができた。

「The Western Wall →」

「Church of the Holy Sepulchre →」

「Via Dolorosa St →」・・・などなど。

 

西の壁って何だ?程度の知識から、辛うじてオフラインでも確認できたダウンロード済のGoogle mapを見ると、どうやら「The Western Wall」とは「嘆きの壁」の事であるらしかった。

手探りにはなったが、後は看板を追いかければ目的地に辿りつけそうだ。

西の壁?



 

キッパを被る。ゴルゴダの丘に向かう。

嘆きの壁の入口まで到着し、セキュリティチェックを通過し無事入場する事が出来た。

(イスラエルではどこに入るにもセキュリティチェックがある)

嘆きの壁を目にし、「おお、これがあの有名な・・・」と、英名もさっき知ったようなにわかが知ったかぶりでスマホを構えると、係員から注意の声をかけられる。

どうやら、安息日ユダヤ教の礼拝時間らしく、写真撮影が禁止されているようだった。

さりとて、観光はOKとの事だったので、壁に近づき、フリーで借りられる使い捨てキッパ(ユダヤ教徒の小さい帽子)を被り、壁に手を当て周囲の人間と同じように祈りを捧げた。何を祈ったのかはさっぱり覚えていないが、多分すごく世俗的な事だったろうと思う。

この嘆きの壁付近には、世界三大一神教の聖地がひしめき合っている。

 

ユダヤ教嘆きの壁

キリスト教聖墳墓教会

イスラム教の岩のドーム

 

なぜ、異なる宗教の聖地が同じ場所にあるかと言えば、これらの宗教はユダヤ教を元にした同じストーリーを共有しているからだ。

かつて、カナンの地と呼ばれる古パレスチナに、アダムとイブの子孫、預言者アブラハムが流れついた。ユダヤ人の始祖であるアブラハムは、神との契約によってカナンの地を与えられた(創世記)。しかし時を経て、エジプトで奴隷になっていたユダヤ人を、モーセが海を割ってシナイ半島に脱出した(出エジプト記)。その後、パレスチナに戻ったユダヤ人が古イスラエル王国を建国したが、内乱や戦争により王国は解体され、当時隆盛を誇ったローマの属州となった。ユダヤ人はローマへの反乱の末、国への立ち入りを禁止され、またしても国を失う事になった。その後長きに渡り国を持たない流浪の民として生きる事になったのだ。

このローマ統治時代にユダヤ人でありながらユダヤ教の改革を唱えた青年イエスが、彼の死後、神の子と呼ばれ生まれたのがキリスト教であり、その両宗教に登場する神のメッセンジャー、大天使ガブリエルに最後の預言者として神託を受けたムハンマドが興したイスラム教なのである。

(大天使ガブリエルは、ある人間に神のメッセージを伝え、その人間は預言者と呼ばれる。ユダヤ教における預言者モーセであり、キリスト教預言者はイエスだ。ただし、キリスト教ではイエスを人間ではなく、神の子として扱っている所に、ユダヤ教との違いがある。一方、イスラム教ではイエスの神性は否定しているが、2人目の預言者として認めている)

 

頑張って説明しようと思ったけど、中田あっちゃんのYoutube見た方が分かりやすいです。

https://www.youtube.com/watch?v=0a7nINmr_Wo&t=1289s

 

これらのストーリーの中で、古イスラエル王国モーセを祀ったローマによって破壊された神殿の一部が「嘆きの壁」。キリストが十字架を背負い、処刑された墓が「聖墳墓教会」。ムハンマドが昇天する時に残った聖なる岩を祀る「岩のドーム」なのである。

 

嘆きの壁をひとしきり観光し、徒歩ですぐの所にある聖墳墓教会に向かった。ここでも、礼拝場で周囲に習って跪くものの、そもそも異教徒であるためか文化的な違いのせいか、何とも居住まいが悪かった。

聖墳墓教会

看板頼りに「ヴィア・ドロローサ」を歩く。

ローマ統治下で、ユダヤ教の異端者であったイエスが密告により死刑宣告をうけ、十字架を背負いながら磔刑を受けたゴルゴダの丘まで歩いたという有名なストリートだ。

ヴィア・ドロローサ

通りの各所には、イエスのエピソードがいくつも残されており、チェックポイントのようになっている。一見して、とても美しい通りだった。

静かで美しい通り

そんな美しい道を、独身という十字架を背負いながら僕は歩いた。

 

イスラム地区へは入れない。

この旧市街の城壁の中は、4つの民族の地区に区分けされている。

ムスリム地区、キリスト教徒地区、アルメニア人地区、ユダヤ人地区だ。

 

当然、岩のドームはこのムスリム地区にある。

しかし、岩のドーム周辺はなぜかイスラエル軍が厳戒体制を敷いており、入り組んだ城壁のどの通行ルートからも、通行禁止されていた。

話を聞いてみると、イスラム教徒しか入れないらしい。

 

えー、マジかよ!イスラム教徒じゃないと岩のドーム見れないんかー。

と諦めていたが、このブログを書くにあたり調べていたら、金曜と土曜限定で上記なような規制を敷いているとの事だった。別の機会もあったのに・・・残念!

 

チルチルミチル 幸せの青い鳥はステイホテル

 

そうしてスマホも無い中、城壁を歩き回り、最後の足掻きでSIM売り場が空いてないかもう一度確認し(やはり影も形もなかった)、ホテルに戻りチェックインをした。

やれやれ、SIMは明日探すしかなさそうだ。

 

受付には先程とは別の若い男の従業員が座っていた。

自分は日本から来た事、今日がシェバットだと知らなかった事、空港からここまでスマホが無くて苦労した事などを会話していると「そうだ!」と従業員が言った。

 

「これで良ければウチでもSIM買えるよ」

100GBも買えるんだぜ



 

 

「あるんかい!!!」